
個展ロゴデザイン:宮川洋平(bulwark)
「クリスマスはだれにでも」は2024年12月にHBギャラリーで開催した作品たちです。
大好きなクリスマス。でもクリスマスの何がそんなに心をウキウキさせるんでしょう。
私が今まで見た、感じた、もしくは見てみたいと思う、そんなクリスマスの光景を絵にしてみました。
個展の時は文章は用意しませんでしたが、
こちらでは絵のエピソードも含めて楽しんでいただければと思います。

『こっちがいい!やだこっち!」
ドアに飾るリースをどちらかにするかで言い争っているおじいちゃんと孫を描いてます。
おじいちゃんは大きなトナカイのついたリースを、お孫さんはプリンセスのついたかわいいリースを飾りたいんですね。
このシーンは、私の大好きなアメリカのシットコム『FRASIER』のエピソードに出てくる
ワンシーンをオマージュしています。
クリスマスのある日、フレイジャーが家に帰ってくると、父親のマーティが子供向けの大きなトナカイのリースを飾っています。
※息子のフレイジャーは40代なのにも関わらず。
クリスマスは童心を思い出しますね。大人になったから大人っぽいものを選ぶのではなく
子供のころ好きだったものを自分の子供にも共有したい、というマーティの楽しい一面が見れる大好きなシーンです。

『そんなに慌てたら、転んじゃうよ』
冬の朝のゴミ出しの様子を描いた絵です。舞台はイギリスになります。
Terraced houseと呼ばれる住宅地には必ず裏通があって、そこにみんなのゴミ箱があります。
ゴミ収集車はその裏通を走ってゴミを回収します。
私は、家の中でぬくぬく快適に過ごしていた部屋着のまんま外に出てくる人がなぜか好きで、
その様子を描きたくて作成した絵になります。
子供の頃、英国のスーパーに行くと店員さんがサンタ帽をかぶっていたのを見て、
サンタの帽子って買えるんだ!と胸ときめかせた想いがあります。
日常で働くいろんな人がサンタ帽をかぶっている英国の冬が大好きでした。

『あら大きくなって』
この絵も舞台は英国になります。英国のコッツウォルズという美しい丘陵地帯です。
昔から、そしてきっとこれからも変わらない風景が広がる、私の大好きなイギリスの場所ですが
そこに住むおばあちゃんとお孫さん、という設定で描きました。
いっしょにいる犬はグレイハウンドです。ドッグレースで見かける犬種ですね。
私は典型的な英国の家を描くときは必ず煙突を描いてしまい、フォアフォアと煙を描き足してしまいます。
今でも冬の空を見ると、英国の住宅地では煙突から煙が上がっていて、それを見る時間がなんとも好きでした。
そこに人の暮らしー料理をしているのか、火を焚べているのか、シャワーを浴びているのかーが見える気がするのです。

『ようこそサンタさん』
クリスマスのショッピングモールの様子を描きました。
街にやってきたサンタさんが、みんなと会って、握手をしたり、写真を撮ってくれる場面です。
サンタにだっこされている子が泣いてしまってますね。
普段は大好きなはずなのに、いざ実物を目の前にすると、泣いてしまう子っていると思います。
かくいう私がそうでした。
小さな頃、デパート屋上の遊園地に、当時大好きだった『光戦隊マスクマン』が来ると聞いて
母親が会いに連れて行ってくれました。
ところがステージで悪者をやっつける実物マスクマンを目にした途端、私は泣き出してしまうのです。
他の子達は、客席で喜んだり、マスクマンに抱っこしてもらう子もいるのに、自分はその中に入っていけず、
ただエンエンと母に抱きついて泣いてしまうのでした。なぜでしょうね。

『いろいろ間に合わないぞこりゃ』
この絵も舞台はイギリスになります。詳しく言うと、イギリスのニューカッスルという北東の街になります。
まさにこれは私の冬の思い出そのもの。
当時中学生だった私と弟は、毎朝母の車で学校まで送ってもらっていました。
ニューカッスルは(というよりイギリスは)緯度が日本よりもだいぶ北なので
それなりに寒い場所になります。(家の中はセントラルヒーティングで暖かい)
家を出て車で出発しようとしても、窓がすべて凍っていて走れません。
まずはそれを溶かさなければならない、ということで母はよくケトルのお湯を使っていました。
周りを見ると、ご近所さんも同じように窓の雪をガリガリおとしてます。
住んでいた場所がどれだけ寒かったかなんて覚えていませんが、
東京ではこういう光景は見ないのでニューカッスルは相当寒かったのでしょうね。

『クリスマスの朝』
家の中で、今まさに日常の何かを送っていたんだろうな、と思えるような場面というのは
私が特に好んで描くモチーフです。
この絵の中でも自分が見せたかったシーンというのはいくつかあります。
プレゼントを喜んで開けているこどもたち、
それに合わせて起きてきたお父さん、
きっと直前まで子供たちが食べようとしていた朝ごはん。
ミステリ本が並ぶ本棚、古い家の匂いのするクマのぬいぐるみ。
窓辺に飾られた木のツリーと、積み木の猫。

『ぼくにもちょうだい』
レイモンドブリッグスが描いた「さむがりやのサンタ」という絵本がとっても好きです。
僕の持つサンタのイメージはまさにあの絵本によってかたどられました。
子供達にプレゼントをあげる存在なのに、どこか気難しそうで、しかめっ面。
今考えるとイギリス人が思い浮かびそうなサンタで、納得してしまいます。
でも、だからこそユニークで、暖かさも素朴さも感じるのでしょう。
そんな「さむがりやのサンタ」の中で、サンタが自分の犬と猫にプレゼントを渡すシーンがあります。
そのプレゼントの包装紙が実にクリスマスっぽくて、この絵でもそれに寄せて描かせて貰いました。
「この絵に出てくる犬のモデルは、本田さんの以前飼われていた柴犬ですか?」
と個展のときにも聞かれましたが、この子はべつのワンちゃんです。

『甘酸っぱい匂い』
家の中の、特に台所の風景を描くのが好きです。なぜでしょうね。
大好きな湯気や、ティーポットや、おやつがあるからかもしれません。
台所やダイニングというのは家の中心な気がします。
どの季節でも台所はたいせつですが、冬となると台所は手放せません。
私の場合、朝起きたらまずお湯を沸かします。熱いお湯があるだけで安心するのです。
お湯を沸かすちょっとの火でだって暖を取れますし、トースターの「チン」という音も楽しげです。
私が台所に立っていると、眠っていた犬も「おやつでも貰おうか」とノソノソやってきます。
いろんな動きが感じられる楽しい場所。それが台所ですね。

『アグリーセーター』
アグリーセーター(醜いセーター)なんて俗称がつくまでは
単純にクリスマスセーターとして親しまれていたのだろうに。
クリスマス映画の代名詞となった「ホームアローン」でも登場人物たちが
色とりどりのクリスマスセーターを着てますね。
いつからかこの手の派手なセーターがアグリー(醜い)と言われるようになってしまったのは
無難色や無地の服が流行したことが原因なのでしょうか。
とは言え、私も個展に合わせてクリスマスセーターを購入し、
会場では気合と共に着てはみましたが
やはりアグリーかも。。。と思ったのでした。
来年また着ますけどね。

『家に着くのが楽しみ』
クリスマスといえば、お家で家族ですごしたり、
大切な人と外で遊んだり、みんないろんな用事をつくるもの。
では、その用事に向かう途中や、もしくは家路についたときは、みんなどんな様子なのでしょう。
そんな僅かな時間だって、きっとクリスマスらしい片鱗が見れるのではないか、
そう思って描いた絵がこちらです。
僕はよく立ち食い蕎麦でご飯を済ますことがありますが、
クリスマスならきっと蕎麦屋さんだって可愛らしく飾り付けしているかもしれません。
隣で蕎麦をすするお父さんは、これから会う子供のためにプレゼントを持っているかもしれません。
これからデートに向かう人もいるでしょう。
今日がクリスマス、というだけで、いつもより少しだけ華やかな服を着ている人もいるかもしれませんね。

『寝ないと来ないなんて』
サンタさんが来るのを、まだかまだかと寝ずに待っていたことがあります。
結局いつも眠気に負けて寝てしまうんですが
「今夜サンタさんが来る」とわかっていながら、寝ないといけないなんて!
なんとも歯がゆい気持ちで、興奮冷めやらぬまま寝てしまうわけです。
是非ともお会いしたい!お会いして、プレゼントを直に受け取りたい。
大人になってからフィンランドへサンタさんに会いに行ったことがあります。
大人になったはずなのに、サンタさんに会うと、なぜか顔は綻び、
やっぱり子供のようになってしまうんですね。不思議です。

『みんな、ありがとう』
大好きなキッチンの絵です。
小さな村のような場所に住んでいるおばあちゃんの家は、
土地柄もあってか、台所がとても広いお家です。
古い家でもあるので、暮らしの匂いが染みついた、居心地の良いお家です。
家のなかに派手なものはなくとも、長年使われてきた食器や小物には安心感があります。
クリスマスカードを大切な人に送りたくてメッセージを書いているところですね。
大好きなおばあちゃんの周りには自然と家族が集まってきます。
猫は気ままに気分良く、犬はちょっととぼけた様子でノタノタと。
明日はきっとみんなで郵便局に行くのかもしれませんね。

『いいものあげるね!』
この絵はまさに私の作業部屋の様子を描いたものです。
2024年の夏に亡くなってしまった愛犬のひるねへの想いをこめた作品でもあります。
ここでも「さむがりやのサンタ」に登場する骨のプレゼントを描いております。
妻が隠し持っておりますね。
クリスマスはたいせつな家族と過ごしたいですね。